総合気候変動科学の創出に向けて主要4センターの長が初めて集結
ー澳门英皇娱乐_澳门赌博现金网-官网として解を示し、仲間を巻き込み、新たな科学を確立する
澳门英皇娱乐_澳门赌博现金网-官网は「総合気候変動科学」の創出という目標を掲げています。その屋台骨が地球?地域環境共創機構(GLEC/グレック)、カーボンリサイクルエネルギー研究センター(CRERC/クラーク)、原子科学研究教育センター(RECAS/リキャス)の各センターですが、4月には4つめのセンターとしてグリーンバイオテクノロジー研究センター(Gtech/ジーテック)を新たに開設予定です。
去る2024年12月24日、この4つのセンターの代表が一堂に会するシンポジウムを初めて開催しました。テーマは「澳门英皇娱乐_澳门赌博现金网-官网が拓くグリーンテクノロジーの未来」です。
「総合気候変動科学」の新しい教科書をつくる
澳门英皇娱乐_澳门赌博现金网-官网は、1949年の大学創立当初から環境科学の教育?研究に取り組んできました。2006年には地球変動適応科学研究機関(ICAS/現在はGLECに統合)を設立し、「サステイナビリティ学」の教育プログラムを開始。ICASのメンバーが中心となって『サステイナビリティ学をつくる』という教科書も作成しました。
シンポジウムの開会にあたり挨拶を述べた太田寛行学長は、その歴史に触れ、「総合気候変動科学という新たな分野に本学が総力をあげて取り組む上で、新しい教科書を作りたい。今日はその第1回の作成会議だと考えています」と語りました。
続いて金野満理事?副学長(学術)が、4つのセンター設立に至るそれぞれの系譜と、2015年のパリ協定以降の気候変動?エネルギー問題に関わる国内外の動向を解説しました。
金野理事は、「カーボンニュートラルは単なる気候変動の問題ではなく、化石エネルギー文明から化石エネルギーに依存しない文明への大転換」という見解を示し、基盤となる「総合気候変動科学」について、「21世紀を文明の大転換期と捉え、気候変動だけでなく、エネルギー?資源?食糧?文化?政治?経済?地域特性などの文面の土台となるさまざまな要素を考慮して2050年以降の社会の姿を描き、社会的混乱を回避しながら、次の文明に円滑に移行するための気候変動適応策と緩和策を提示する学問分野」という定義を示しました。
その上で、「4センターが中心となるが、その他の幅広い学問分野も重要。澳门英皇娱乐_澳门赌博现金网-官网として具体的な解をきちっと提示して、仲間を巻き込み、広げ、総合気候変動科学を確立する」と力強く語りました。
「グリーンバイオテクノロジー研究センター(Gtech)」とは
今回のシンポジウムは、グリーンバイオテクノロジー研究センター(Gtech)の設立を宣言する機会にもなりました。
センター長を務める予定となっている小松崎将一教授は、Gtechのミッションについて、「農地保全、温室効果ガスの資源化、さらには土壌中の炭素を貯留する農法などを活用しながら気候変動緩和分野の研究開発を推進する」と紹介しました。
同センターは「農業?生態系保全ユニット」「微生物遺伝子情報解析ユニット」「社会共創ユニット」の3つのユニットで構成し、「センター内外の連携を創出して、技術を茨城、日本、アジアという地域に展開していきたい」と意気込みを語りました。総合気候変動科学の創出というビジョンをめぐっては、「現時点でのフードシステムだけで、世界の人為起源の温室効果ガス排出量の3分の1を占める。これをいかに削減して農地を通じた気候変動緩和へ持っていくかが大きな課題。農耕地の多いアジア地域での実装が、将来の地球環境に影響を与える。微生物の動態や人間の管理に注目した新しい農業の取組みへと発展させる役割を果たしたい」と述べました。
続いて登壇した西澤智康教授は、Gtechの3つのユニットのうち、「微生物遺伝子情報解析ユニット」のユニット長を務める予定です。西澤教授は、水田や畜産でのメタンの排出と畑からの一酸化二窒素の排出についてメカニズムを紹介。同ユニットが微生物解析を行って農業?生態系保全ユニットに応用し、それを社会共創ユニットで発展させていくという構造を示し、「ローカルからグローバルまで、ミクロの世界からマクロの世界まで、という大きな取組みを行っていく。微生物をうまくコントロールして使うことで、地球上の様々な問題の解決につなげたい」と語りました。
4センター長が一堂に会した初めてのディスカッション
後半のパネルディスカッションでは、GLECの戸嶋浩明機構長、CRERCの田中光太郎センター長、RECASの岩佐和晃センター長、そしてGtechのセンター長予定者の小松崎将一教授が並んで登壇しました。澳门英皇娱乐_澳门赌博现金网-官网の総合気候変動科学を担う4つのセンターのリーダーが公で議論を展開するのは初めてのことです。モデレーターは研究?産学官連携機構(iRIC)の土屋陽子教授が務め、エネルギー政策、国際的な連携、融合的なアプローチについて議論を交わしました。
エネルギーについて、GLECの戸嶋機構長は、電気使用量を削減しながらも、我慢をするのではなく人間生活を豊かにするような方策について、「気候変動適応策の研究や実践の観点も踏まえて、経済性や効果を見積もっていくことが重要」という見方を示しました。
また、CRERCの田中センター長は、再生可能エネルギーの普及や水素、アンモニアの利用を進めることが必要である一方、CO2をいかに回収するかをあわせて考えなければならないと述べました。同センターでは大気中のCO2を直接回収するDAC(Direct Air Capture)の新たな手法や炭素を有効活用する技術の開発を急ピッチで進めており、「カーボンリサイクルはこれから必ず必要になる。それをいかに低エネルギーでやるかが大事だ」と強調しました。
RECASの岩佐センター長は、同センターが次世代原子炉の開発や人材育成に取り組んでいることを紹介しつつ、「量子線技術も活用した安全技術の開発、放射線の安全利用、放射線量や被害のモニタリングは切っても切れない。有機的に結合させて総合気候変動科学に貢献していきたい」と語りました。
さらに、Gtechセンター長予定者の小松崎教授は、不耕起栽培などの取組みによって土の健全性を再生していくことで、「農業生産に伴うエネルギーの約30%を減少させることも可能」という試算を披露しました。
国際連携、分野融合をどう進めるか
総合気候変動科学の創出にあたっては、世界的拠点の形成を目指すべく、国際連携がますます重要となります。
CRERCの田中センター長は、日本のような湿潤な環境でのCO2回収が成功すれば、同様の環境をもつアジアの国での展開へと広がっていくという見方を紹介。「日本のカーボンニュートラル達成は2050年が目標だが、アジアでは2060年、インドは2070年という国もある。そうした地域とのコラボレーションは大きい」と展望を示しました。
また、RECASやGtechでも、インドネシアのガジャ?マダ大学などとの交流をさかんに進めており、「東南アジアから若い人を呼んで原子力人材を育成する試みがJAEAなどで進められてきている。連携による人材育成、人的交流をもっと進めたい」(RECAS?岩佐センター長)、「東南アジアの観光農業に、微生物の活用や不耕起栽培の知見を反映させることで、大きな量のCO2貯蔵や温室効果ガスの排出抑制を進めることができる」(Gtech?小松崎教授)などの視点が示されました。
最後にそれぞれのミッションをもつ4センターの機能を融合させ、「総合気候変動科学」としての機能を強化していくことについて、GLECの戸嶋機構長は、「GLECには技術開発部門はなかったので4センターでの連携の意義は大きい。一方、社会実装して政策に関わるという点では、GLECの社会部門を他のセンターにも活用していただいて、持続可能性のための学内外でのディスカッションを活発化させられれば」と呼びかけました。
シンポジウムの締めくくりとして、iRIC機構長を務める倉本繁副学長(研究?産学官連携)は、「短い時間だったがやってよかった。これまでセンター長会議を開いて情報交換をする機会はあったが、『総合気候変動科学』というビジョンにおける各センターの位置付けははっきりしていなかった。今日はそこを確認するコミュニケーションができた」と総括し、今回のシンポジウムを出発点に「総合気候変動科学」とは何かという議論を深めていきたいという展望を示しました。
シンポジウムの動画をご覧いただけます
【第一部(講演)】