エネルギー問題と地球温暖化問題の両方を解決できるとして期待が高まる核融合発電。澳门英皇娱乐_澳门赌博现金网-官网は、その技術シーズの社会実装を考えるサイエンスアイデアソンを1月１７日、那珂市にある国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構（量研：QST）の那珂フュージョン科学技術研究所で開催しました。同研究所が有する実験装置の見学や、日本の核融合研究に関する講演、研究者とスタートアップ支援者らをつなぐワークショップを通じて、核融合関連スタートアップ創出の道筋を探りました。

　大学での教育や研究の成果を活かした革新的で成長が見込まれる企業の創出が期待される中、澳门英皇娱乐_澳门赌博现金网-官网では、GTIEつくば拠点の技術シーズからの大学発スタートアップを創出する取り組みを行っています。サイエンスアイデアソンイベントは昨年１０月に続いて２度目の開催となります（前回の様子はこちら）。前回の基調講演で、エネルギー系のスタートアップの設立には特有の要件があり、「電気の時代をどうするか？」を念頭に置くと成長の余地があるとの指摘がありました。GTIEつくば拠点には多くの大学?研究機関が参画していますが、エネルギー系の最先端研究の核融合を事例に、スタートアップ組成に係る課題と実現性がある方策について現地の雰囲気を肌に感じつつ議論する場を設けました。

　核融合とは、水素などの軽い原子同士をぶつけて、ヘリウムなどの重い原子核に変えてしまうことです。その際に起こる莫大なエネルギーを利用して発電するのが核融合発電。それに用いる燃料は、海水中に無尽蔵に含まれており、発電時に二酸化炭素が発生しないことから、エネルギー問題と地球温暖化問題の根本的解決が可能とされています。

　今回イベントの会場となったQST那珂フュージョン科学技術研究所には、世界最大級のプラズマ実験装置「JT－60SA」があります。JT－60SAは、核融合に必要なプラズマを発生させる装置で、強力な磁場によりプラズマを閉じ込める「トカマク」式を採用しています。2023年に初プラズマを達成し、その後、プラズマ電流と体積の世界記録も樹立しました。プラズマは超高温の原子核と電子がバラバラになって飛び回る状態で、物質の個体、液体、気体に続く第４の状態です。JT－60SAでの研究成果は、日本やヨーロッパなどがフランスに建設中の「国際熱核融合実験炉（ITER）」に反映されます。

JT-60SA

　同研究所所長の花田磨砂也氏は「フュージョンエネルギー（核融合発電）は地球温暖化の切り札」と意義を強調し、「世界各国が協力、競争して開発を進めており、近年は民間投資を受けたスタートアップによる開発も活性化している」と現状を語りました。

　花田氏による研究所の紹介の後、参加者は研究所内の見学へ。高さ15.５メートルのJT－60SAを見下ろしながら、プラズマの持続時間や装置内の使用されている「超電導コイル」の冷却方法などに関して質疑応答を行いました。

JT-60SA見学ブースから写真を撮る参加者

　続いて講演、ワークショップが行われました。
　「国家戦略を踏まえた最近の取組と国内外の動向」と題して内閣府科学技術?イノベーション推進事務局参事官で文部科学省研究開発戦略官の馬場大輔氏が講演。各国が国策として核融合研究を推進している現状を紹介し、「アメリカでも大学発ベンチャーが活発だが、日本との違いはベンチャーに投資や人が集まっているということ。そういったところについては、国としても自治体、企業、ステークホルダーの皆さんと連携しながら仕組みをつくっていきたい」と話しました。

　茨城県科学技術振興課長の小貫智也氏は核融合産業に関する茨城県の取り組みを紹介しました。

馬場氏

　ワークショップは、「核融合発電に正面から取り組み、社会実装や起業にどうつなげるか」を考えるグループ、「核融合に関する研究開発の過程で得られた技術が他のどのようなサービス等に転用できるか」を考えるグループ、その中間のグループの３グループに加え、「国策の影響が受けやすいエネルギー系の社会実装についてマクロ的に今後の施策で求められること」を考えるグループに分かれて実施しました。いずれのグループにも研究者や支援者、投資家...と属性の異なるメンバーが混在しており、それぞれの立場から、グループのテーマについて意見を出し合い、連携のイメージを膨らませました。

（取材?構成：澳门英皇娱乐_澳门赌博现金网-官网広報?アウトリーチ支援室）